出演:
松本麗華さん
河野義行さん
有田芳生議員
安田好弘弁護士
シンポジウムに行ってきました。
とても勉強になりました。
以下、重要と思った点の書き取りです。
正確な一言一句ではありません。
省略もあります。
ご了承ください。
また、訂正箇所などありましたら、お知らせいただけるとありがたいです。
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安田弁護士:
進行役をつとめさせていただきます。
今日のテーマは
1 オウムとの関わり
2 オウム事件とはなんだったのか
3 オウム事件後の社会はどう変貌したか
4 オウム事件と今日の日本
です。
それでは、「1 オウムとの関わり」です。
河野さんからおねがいします。
河野さん:
こんにちは。河野です。
1994年6月におきた、松本サリン事件で、オウム事件に関わりました。
この事件で、わたしの妻は心肺停止をし、14年間、意識が戻らず、亡くなりました。妻をいれて、最終的には8人の死者を出した事件になります。
妻は、サリンにより低酸素脳症という状態になりました。これは脳内の酸素濃度が下がり、脳が萎縮していき、最期の方は体温が低下していきました。夏でも湯たんぽをしていました。
わたしの場合は、犯罪被害者として、働けないとか、そういう問題に直面しただけではなく、この事件の二日後に殺人犯になってしまいそうになりました。これは、警察のリークから、マスコミがわたしがやったという印象の報道をはじめ、わたしが入院した2日間で報道が過熱しました。
最終的には、病院もマスコミからわたしを守りきれず、退院してくださいと言われました。退院後、犯人扱いされるような内容の事情聴取をされ、逮捕を覚悟しました。
わたしは家族を守る為、弁護団を組んだり、資金繰りをしたりしました。財産をなげうって家族を守ろうと思いました。
しかし、翌年1月、読売新聞のスクープで、報道の流れが変わりました。
アレフの人たち、客席に来ている荒木浩さんも、妻のお見舞いに来てくれて、わたしはそれを受け入れていました。
アレフだからといって、世間が差別するのは許せません。自分の体験と重なるところがあります。
安田弁護士:
事情聴取を受けた時、死刑になるかもしれないという気持ちはありましたか。
河野さん:
わたしは入院中に報道を知って、子供たちに、「警察の誤認逮捕、裁判のミスジャッジはあり得る。このように『最悪』が重なったら、お父さんの死刑はありえる、人間のやることは、間違いがある」と伝えました。
安田弁護士:
有田さんお願いします。
有田議員:
1980年代、出版社をクビになり、フリーで活動するようになりました。
その時朝日ジャーナルが、霊感商法の特集をやっていた。そしてその頃、江川紹子さんが、オウムをやっていて、わたしは週2回くらいで江川さんと飲んでいた。その時、江川さんからオウムについて詳しく教えてもらいました。
事件から10年後、警視庁の幹部と飲み会をしました。今だから言えるといって、当時わたしの事務所にわたしがいない間に上がり込んで調査したり、尾行したり、妻も尾行したりしていたという話をされました。50人体制で尾行されていたそうです。
安田弁護士:
それだけの警察がついてて、どうして事件が止めれなかったんでしょうね。
それでは、松本さんよろしくお願いします。
松本さん:
わたしは、事件当時の関わりはありません。ただ、事件前後を過ごしてきた、ということでしょうか。
しかし、父や親しい人たちが、軒並み逮捕されて、面会や差し入れをしていくうちに、事件に向き合わざるをえませんでした。
安田弁護士:
本を出された思いは何でしょうか。
松本さん:
本を出す時は、怖くてとても悩みました。
しかし、父が心神喪失で、赤ちゃん以下で、執行される恐怖がありました。
あと、わたしがいくら教団から離れても、公安から尾行や盗聴されて、わたしもいつ何で逮捕されるか分からないという恐怖がありました。
こうなったら、もう自分から、しっかり発信できる人になろうと思いました。
安田弁護士:
では、次のテーマ「2 オウム事件とはなんだったのか」に参ります。
事件とは、狂気か、教祖か、信者か、何が問題だったのでしょうか。
河野さん:
誰もわからないんじゃないかと思います。教祖本人が話さないと。
裁判は、起訴事実のみ語られます。真相というのは、実際には分かってないし、分からないのでは。
麻原さんに喋っていただかないと。
ただ、社会の正義と、あの組織の正義は違った。
有田議員:
シャクティーパットは、暗示作用もあったかと思いますが、やはり麻原さんには優れた能力があったのでは、とも思っています。
教団は、最初はヨガのサークルでした。信者たちの入信同期も、ほとんど健康目的の人ばかりだった、あるいは真面目に悟りを開きたいという人もいたかと。
最初に信者さんが亡くなりました。それを表に出さないことで、内部の軋轢ができて、次に信者を殺してしまった。そこから隠さなければという精神が出てきたのでは。
上祐さん、早川さんは選挙出馬を反対したが、選挙に出た。
麻原さんは本気で当選すると思っていたから、落選した時、陰謀だといった。そして石垣島ツアーを行い、ボツリヌス菌の準備をした。
村井秀夫が殺されたことや、井上嘉浩の動きなどを追うと、幹部間で出世競争があったのではとも感じる。
教祖の威を借りて、動いた場面があったのではないかと。
松本さん:
わたしは、事件についてしっかり勉強できていません。
当時の教団の空気や、(囚人たちへ)面会した状況から感じたことは、事件を起こした真相は、個々人によるもので、日本人的・人間的な弱さが大きかったのではないかと思います。
父は、性格的に空気を読む、おもんばかる、人をねぎらったりとか、人から嫌われたくないという繊細さを持っていました。
そういう人を、周りの人間たちが神格化して、周りの人間が力を得てゆく。周りも空気に逆らえなくて、例えば作業についてもこれはこうでいいんですかとか、確認をしない、なんとなく、グル・・・グルというのは父のことですが、グルの意思をおもんばかる、という教義ゆえ、暴走しやすい空気ができたのではないかと思います。
安田弁護士:
共犯者たちは、マインドコントロールだったということで解決されていますが、そこのところが、詳しく、どういう思いだったかということが、法廷では全く明らかにできませんでした。そこのところを、今日会場にいらっしゃる、荒木浩さんと、永岡さんにも聞きたいです。
荒木さん:
・・・みなさんのおっしゃることは、もっともだなと思います・・・
安田弁護士:
タントラヴァジラヤーナという教義は、人を殺すことが正しいということを説いていますが、その教義についてどう思いますか
荒木さん:
わたしも、同様の教えを学んでいましたが、事件には結びつきませんでした。
「でっちあげ」だったと思っていました。
当時の空気としては・・・事件に飛躍するような感じではなかったけども、組織は大きかったので、一人一人が思い思いに動いているところがありました。
松本さんの言う様に、そういう所はあったと思います。
安田弁護士:
「尊師」の命令に、絶対従え、と言われていましたか
荒木さん:
当時はそうでしたが、あくまで一般的なものだったと思っていました。
どんな宗教でも、信仰があれば、その宗教が崇めているものに帰依するじゃないですか、そういう普通の信仰と変わりません。
宗教的な、「グル絶対」だったと思っています。
安田弁護士:
永岡さんはどうですか
永岡(英子)さん:
わたしは、今日は、おしゃべりするなと、言われてきたのですが・・・
教団の考え方について、はじめは、苦悩しましたが、マインドコントロールということは、初期から学んできました。そしてそれは、社会の中でも多分にあることだと学びました。だからといって、100%悪いものというかは、内容によります。
オウムの場合は、教祖自身が、本人の強い意思をアピールして、彼のものの考え方があり、それに同調できる人が集まり、こういう結果を招いたのではないかと思っています。
こんな結果・・・13人もの死刑囚が出るようになるとは、思いませんでした。
そして、今回、フォーラムで、こんなにも幅広く、たくさんの人が会場に集まったことも、あまりなかったと思います・・・
事件は何だったのか・・・結論はまだ出ません。
安田弁護士:
永岡さんの息子さんは教団から帰ってきましたが、同じ信者で罪を犯した方もいます。同じ信者の親として、どう思っていますか。
永岡さん:
それは、もっとも聞かれたらキツいところです。
死刑囚の親御さんとも、全員ではないですがお付き合いはあります。
子供が入信してからですから、およそ30年間、本当にお辛いと思います・・・声のかけ方は・・・今も分かりません・・・・(泣きそうでした)
有田議員:
カルトに入信する人というのは、オウムに限らず、統一教会なんかもそうですが、親子問題を抱えている人が結構多いです。そこが気になっています。
上祐さんも、自分の本で、お父さんとお母さんのことをはじめて明かしました。
プライバシーがあるのであまり言えませんが、上祐さんは「尊師は目標であり、父のようだ」と言っていました。
また、岡崎一明さんも、実の親もあまり知らないまま養子に出されました。
岡崎さんも「尊師は父のようでもあり、母のようでもあった」と公判でいっています。
父や母との、うまくいかない関係を、教祖に託す人がいるのではないかと思いました。
河野さん:
アレフの信者さんと話をしたり、井上さんや遠藤誠一さん、中川智正さん、新實智光さんと面会したことがありますが、その時必ず「なんでオウムに入ったのか」と聞きます。
みんな麻原さんの能力・・・というんですかね、特別なものをもっているといいます。
中川さんは、病気(巫病)のようでしたが、それが麻原の前では治ってしまったことで、信用してしまった。
例えば、教団内の仕事で、たくさんの報告書を出したとき、それがかなりの量で、少しだけ手を抜いてしまった、その手を抜いたところはあまり見ないで欲しかった・・・でも麻原さんは、そういうところを的確につっこんでくるとかあったようで、特別な能力をもっている人に、なっていった。彼のいうことなら、聞くこと、やること、正義なのかなと。
信者たちは、シャンバラ計画というんですか、聖地を作ろうとか、真面目にやっていた人たちです。テロをやろうとかではなく、自分たちと教祖は特別で、特別な人たちが住むところ、聖地を作ろうとしていた。そういう人たちだったのに、どこかで歪んでしまったのではないかなと思います。
つづく
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